中国コラム
中国市場で「高級りんご」を売りたい。
知人のSさんを通し最近弊局へこんな依頼が飛び込んだ。
長野県のA農産が中国の富裕層を相手に「高級りんご」を販売したいが、販路について一つ相談に乗ってくれないかという話である。
この依頼を聞き、昨年日本のあるテレビ局が放送していた、北京で評判を得た「青森高級りんご」の映像記憶がよみがえった。
中国北京の観光スポットでもある繁華街、王府井(ワンフーチン)にある高級品を扱うデパートに、青森のりんご生産農家が持ち込んだ「高級りんご」が、中国の富裕層相手に一個80元(日本円1,200円)の高値で次々と売れた映像が紹介された。
日本のある政治家がこの番組の中で「日本の農産物は高価で輸出に不向きだと言うが、そんなことは無い、高品質を上手くアピールし、農業生産者おのおのが工夫すれば海外にどんどん輸出できる」と鼻息の荒いコメントをしていた。
これを契機に北京を中心に年間2tの「高級りんご」が売れたそうだが、ある青森の農家などは日本市場ではもうりんごが売れず、数年かけて育てた高級りんごの生る大木を全部切ってしまって、ハヤマッタと後悔している農家なども紹介された。
中国北部や北西部でもりんごは取れるが、品種改良が遅れており、堅い酸味のあるあまり美味しく無いりんごが多い。 そもそも北京で青森の「高級りんご」が評判になったのは、中国人の農業研修生が日本のりんご農家に来てそれを中国に持ち帰り、これはおいしいと評判になり、その話を聞いた青森の生産農家の若者が中国北京への販路を作ったそうである。
今回の相談は二匹目の鰌の話のようだが、Sさんの紹介でNさんに会い相談内容を伺った。 今回の話はSさんの先にNさんという相談者窓口になる仲介者がいて、その先がA農産である。あくまでもNさんが窓口で今回の話は進めるそうで、A農産と直接会って話を聞くことは出来ないそうである。
Nさんに相談内容を簡単に書いてみると
1.中国でのA農産の貿易業や小売業起業の相談ではない。
2.中国で「高級りんご」と「りんごジュース」を買う業者を見つけて欲しい。
3.青森より長野の方が日照時間が多く、甘く良質なりんごが取れる。中国人は甘味が好みと聞いており、長野のりんごのほうが好まれるはずだ。
4.商売の条件として、商品代金は日本円先払い、商品は日本の港渡しである。
5.A農産の若社長は中国へは過去数回渡航歴があり、中国株なども手がけており中国研究はしている。しかし、今回は現地視察をしない。あくまでも日本において中国側に販売する商流を取りたい。
6.弊局の報酬は商売が成立し、商品販路の中から数%の報酬を取っていただきたいとの要望。
どうもNさんの話の内容を聞いてみると、A農産は自分に都合がいい相談を弊局にしてきたと思える。直接話せないのでA農産の真意は量れないが、Nさんだけの話を鵜呑みにすると、今回の相談のA農産の言い分は中国へ販売するリスク回避を他の企業に求めた内容である。
この相談は、弊局は貿易や中国で小売業の機能がなく、本来の中国起業のコンサルティング業務でもなく、まして直接お客様との意思の疎通が取れないの では、上手く販路が作れたとしても中国の受け入れ先とのコミュニケーションが問題である。A農産がどうしても中国市場で商売に成功したいと言うモードに なっておらず、依存型で、進めていくうち話が消えていくかも知れない。過去にもあまり成功したためしがない相談である。
あまり魅力ある内容でもなく、本来ならば丁重にお断りしたいのだが、古くからのお付き合いであるSさんの面子も考え、一応近々上海に行く機会があるので中国での業者は当たっておきますと告げて退散した。
先日も知人のIさんを通じ、仙台のカー用品販売業者から全く今回と同じ内容の相談があったばかりである。中国に臆病になっており自分で出て行けないのである。
相談者の心理を考えてみると、日本市場は閉塞感が漂っているが、毎日のマスコミ報道の中国市場の繁栄がすごく気になる。そこに、中国での商売の失敗 談がたくさん耳に入るので自分の手は汚したくない。ようは中国に臆病になり出て行けないのでリスク回避の自分に都合のいい相談になる。 本来であれば直接A農産とあって状況をよく聞き、弊局のネットワークを使い視察を重ね、納得したら自分で販路を作ると仲介者が入らず大きな利益が見えてく るのだが。それに高齢者は耳年増で、A農産についているSさんもNさんも中国での日本企業の失敗談を手柄話のようにしている。この話がおそらくA農産とも 語られており、今回の相談の商流は自分の都合のいい日本円で現金先払い、港渡しになっているのかと感じられた。 このようなリスクが無い貿易が出来ることを皆望んでいるが、そうは簡単に商流が作れないのである。
6月後半上海に別件で出張があり、面倒な話ではあるがついでにと元上海ヤオハンの社員であった日本人の友人を訪ね、この話をしてみた。すると意外な返事で、案外上海でいけるかもしれないと言う返答があった。 りんごは北で取れる果物で友人が見ても品質や味が悪く、上海市場に出回る量も少ない。日本の「高級りんご」は売れるかもしれないと言っている。 友人は日系デパートや台湾系、香港系デパートの生鮮食品仕入業者の昔の馴染がいるので、日本の「高級りんご」や「りんごジュース」が上海で受けるか、この手の販路が作れるか動いてみると約束してくれた。
上海の友人から確信ある吉報が届いたら弊局はNさんを説得し、A農産に直接あって、中国のWTO加盟後5年目を迎える外資小売業などの現在の参入状 況を説明し、安心できる商流のお手伝いをし、中国の魅力ある市場に出て行っていただきたく進める考えでいる。A農産との関係を弊局が本来希望するコンサル ティングに切り替えていくつもりである。
「再見」